リヤドラムブレーキのメンテナンス

ほぼ2年ごとの車検でいつも見ているリヤドラムブレーキです。
昔から何度も行っているメンテナンスなのですが、何度やっても迷ったり順番を間違えたりでうまくいきません。
毎回微妙に違う作業も入ったりして、全く同じ作業ではないものの、基本的な手順を忘れてしまうので、今回はきちんと流れをメモに残しておきます。

 

外したアルフィンドラムです。雨の日は走らないので比較的きれいではないかと思います。
普段の走行も少なく、車検時に2年ごとに外していることもあり、サイドブレーキを緩めるとドラムは固着することも無く簡単に外れました。
このドラムですが、内径の摩耗具合により使用できる限度が設定されているようです。
新品状態のドラムは内径228.6mmのようで、摩耗により内径が230.0mmに広がった状態で交換となっています。

 

 

ブレーキ内部。ブレーキダストも少なめです。
ドラム内にある2本のスプリングを外したり、組付けたりする関係で、リヤのアクスルシャフトは写真の位置では無く、黄色線のような位置(赤いばねのラインと平行になるように)にしておくと楽という事を思い出しました。写真のような位置ですと、組付け時にスプリングを引っ掛けるのがやりにくいのです。


 

ドラムを外した状態で内部を確認しておきます。
ブレーキシュー(ライニング)の厚みは車検ごとに確認していますが、やはり年々減ってきています。

 

 

ライニングの厚み。
薄くなってきたといっても、左右共まだ3.5mm程度はあるようですから使用限度(整備要領書での起債は1.5mmが限度とある)までは余裕があります。

 

 

今回はこのシリンダーを交換します。
でも新品へというわけでは無く、今回使うためにメンテナンスした中古シリンダーとの交換になります。

 

 

シリンダーも交換しますし、車検時期でもありますのでフルードを入れ替えます。
その前にフルードを確認しているのですが、右のフロントブレーキ用タンクより、左のリヤブレーキ用タンクのフルードが若干黒ずんでいます。2年前の画像を確認してみたら、やはりリヤ側の方がフロントに比べ汚れていました。
こんなものなのでしょう。

 

吸い取り後。
タンク内はきれい。

 

 

ドラムブレーキの分解へ入ります。まずはブレーキシューの取り外しから。
ブレーキシューを中央で固定をしているピンを、裏側から回らないように指で押さえつつ、写真の金属の輪(リテーナー)を押し込んで、90度向きを変えてロックを外します。
リテーナーは細長い長方形の穴が開いているので、ピンを通して90度回すことによりロックされる仕組みです。
写真ではラジオペンチを使っていますが、もう少ししっかりとしたプライヤー等を使ってしっかりつかんだ方が安全に作業できます。

 

 

同じ手順で反対側の固定も解きます。

 

 

ピンが外れブレーキシューがフリーになります。

 

 

取り外した小物パーツ。

 

 

ピンを外しても、ブレーキシューは上下2本の強力なスプリングで溝に固定されているので、まだ外れる事はありません。

 

 

ブレーキシューを手前側に少し引いて写真の位置までずらします。この状態からブレーキシューを持ち、黄色矢印方向に少し引き、黄色〇印の溝から外すように持ち上げます。
ブレーキシューの先が溝から外れるとシュー同士を近づける事が出きます。するとシューを繫いでいるスプリングの力が弱まり、スプリングの引っ掛け部分を外しやすくなります。
溝に付いている状態でスプリングを外すのは困難なので、溝から外してシュー同士を近づけ、スプリングを外す方法が良いようです。

 

 

スプリングを外すと、ブレーキシューをバックプレートから完全に外す事ができるようになります。
この状態でリヤブレーキの清掃をやっておきます。

 


ブレーキクリーナーを使いダストや古いグリスを落としていきます。

 

 

シリンダー付近。
そんなに距離は走らなくても、2年経過するとブレーキダストはそこそこ発生します。

 

 

今回はシリンダーを外しますから、ブレーキバックプレートの裏側にあるサイドブレーキケーブルの接続部も外します。
シリンダーを外さない簡易メンテナンスなら、これをやらずに済ますことができますが、今回はシリンダーを丸ごと交換するので、ちょっと面倒ですがワイヤーを外さなければなりません。

 

 

サイドブレーキ接続部のピンです。割ピンで抜け防止されています。

 

 

シリンダー本体を外す為には、サイドブレーキワイヤー取り外しの他に、あと二つの工程が必要です。
一つがブレーキパイプとシリンダーの接続部の切り離しで、もう一つはロックプレートの取り外しです。
ブレーキパイプの切り離しは、きちんとフレアレンチ10mmを使って、確実に回して切り離した方が良いです。
パイプを切り離したら、ダストカバーをめくりあげます。このカバーを開けるとその下にあるロックプレートが見えてきます

 

 

ダストカバーは完全には外すことが出来ません。写真の程度までしか上がりません。
カバーのすき間から見える、2枚の薄い金属のプレートが、アジャスタープレートとロックプレートと呼ばれるシリンダーの固定板です。
この2枚のプレートを組み合わせてシリンダーをバックプレートに固定してます。これを外すには写真の位置で矢印方向にドライバーなどで叩き、一枚だけスライドさせていけば外れます。
このプレートは外しにくいかもしれませんが、貫通ドライバー等をうまく一枚目だけに当て、小さなハンマーなどでコツコツ叩いていくと外れると思います。
私は老眼でうまく見えず苦労しましたが、目の良い方なら比較的簡単にできると思います。ロックを外すとバックプレートに固定されたシリンダーがフリーになり、取り外せるようになります。

 

アジャスタープレートとロックプレート。
先のとがっている方がロックプレートで穴の開いている方がアジャスタープレート。
一つ上の写真で言うと、(矢印でマークしている)叩いてずらしていくとあるのが、アジャスタープレート。組み付ける際は上下の組み合わせがあるので注意が必要です。

 

 

シリンダーも外れ、クリーナーで汚れを落とした状態。

 

 

少しブレーキ作業から外れますが、リヤブレーキ付近がよく見える状態ですので、数年前に換えているブレーキホース部分など、見える範囲で不具合箇所が無いか見ておきます。
整備要領書で指示されているブレーキホースの交換サイクルは「4年ごと」となっているので、車検時は継続使用が出来るか確認して、問題ない事を確かめておかなければいけないと思います。今回ホースは数年前に交換していますし、触っても弾力があるのでまだ大丈夫だと思われ継続使用する事にします。

 

 

ちょっと気になる部分がありました。
マフラーの吊りゴム部分です。前の車でもここが切れていたのに気づかず、太鼓がプラプラした状態で使っていた事を思い出しました。
こうしてみるとまだ交換が必要ではないレベルだと思うのですが、ここに関してはゴムパーツをストックしていますので、この気づいたタイミングで交換しておきます。

 

 

どこかにあったはずと思い、探してみたら出てきました。ストラップハンガーという名称のようです。
日付を見ると購入からしばらく経過しているのがわかりますが、このタイプのゴムパーツであれば大丈夫でしょう。
使おうと思って購入していた部品ですから、交換しようと思った時に使わないとタイミングを逸してしまいます。

 

 

使っていた物と比較すると厚みが違います。途中で強化されたようです。
この部品は今でも買えるのかと調べてみたのですが、入手は出来るものの5000円くらいするようです。確かに中に繊維が入り、ただのゴム板では無いのはわかります。
でも昨今の純正部品の値上げラッシュの中では、こうした値付けになってしまうのでしょう。
今回はストック品を持っていたので助かりました。

 

 

作り的には厚みのあるしっかりとしたハンガーです。
マフラーの太鼓部分を、ジャッキで少し上げたり下げたりして、微調整しながらボルトを入れないとうまく固定できません。

 

 

固定完了!本当にしっかりとしたゴムです。
これでしばらく持つでしょう。
というより、この頑丈さなら今後私が乗る限り交換しなくて済みそうです。

 

 

ブレーキに戻ります。
ブレーキダストをクリーナーで洗い流して、古いグリスをふき取ったら、新たにグリスを塗る部分(矢印のあたり)にシムグリースを塗って取り外しと逆の手順で組付けていきます。
ブレーキシューとの当たり面には全てグリスを塗っておきます。

 

 

組付け時のミス防止策。
ドラムブレーキの分解に慣れている方は全く必要のない事ですが、私のように2年に一度、もしくは4年に一度程度のメンテナンスサイクルですと組み付け手順を忘れてしまう場合も出てきます。
ミスを防止する意味で、ドラムに直接メモ書きをしておくと間違えません。外す際に上下と左右を記載しておくと確実です。

 

 

この落書きを誰かに見られたらちょっと恥ずかしいけど、ここは普段見えない部分ですから大丈夫でしょう。
以前の組付け時は、この部分の上下を間違えていますから、そうなるよりはマシです。

 

 

一部ですが、新品の交換部品を持っていたので、黄色矢印の部分を新品に交換しています。
リテーナーとシューを固定するスプリング上下です。

 

 

新品のスプリング、上下2本。これが左右分必要です。
このバネやリテーナー等の小さなパーツについては純正もまだ入手できると思いますし、社外品もたくさんあると思うので、入手に苦労する事はない部分だと思います。
傷んでしまったら、早めに交換しても良い部分ではないでしょうか。

 

 

ブレーキシューやシリンダーが接触する部分はシムグリスを塗っておきます。

 

 

あとは分解の逆をたどり組み付けていきます。
ちょっと注意が必要なのは、下側のスプリングは両方のブレーキシューにあらかじめ付けて、その後シリンダーの溝にセットする順番にしないといけません。
スプリングはシューをセットした後からだとうまくかける事が出来ません。

 

 

分解時によく見ておくとわかると思うのですが、シリンダーの裏側に付けるダストカバーは被せるタイプですから、ブレーキパイプや、サイドブレーキワイヤーを付けた後ですとは被せる事が出来なくなります。
ここも過去に何度もやり直す事になったなった部分です。注意が必要です。

 

 

清掃を終え、ブレーキシューも取り付け終わったドラムブレーキ。
あとはアルフィンドラムを付け、すき間調整をすれば完了です。<2025年11月>

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