リヤブレーキシリンダーのメンテナンス
今回はリヤシリンダーのメンテナンスとなります。
S30系のリヤブレーキには年代によって3種類のシリンダーが使われるのですが、私の車に適合するシリンダーはこの初期車用となります。
シリンダーの見分け方は こちら から。(以前のHPでアップしてたデータを再掲載しています)。
初期車以外の方は参考程度にどうぞ。
このリヤブレーキシリンダーは、実際にしばらくの間使用していたもので、車両から外した際に確認したところ廃棄するほど悪くも無かったので、保管していたものになります。
今回久々に引っ張り出し、作業前に状態を確かめてみたのですが、手入れすれば使えそうでしたので、今回試しにやってみる事にしました。
内部のピストンの状態。
写真ですとピストンの表面がかなり凸凹しているように見えますが、実際に手で確かめてみるとそこまで酷くもありません。
でも新品と比較すると表面の色も変わっている事もあり、使ってから液漏れ等の不具合が発生しないかちょっと心配でもあります。
シリンダー本体。
当初指で触ってみた感じでは、内部に若干段差のような汚れがあったのですが、内部をペーパー(1000番)で磨いてみたところ滑らかになりました。
シリンダーやピストンを磨くときは縦磨き(ピストンと同じ動き)で磨いてはいけないようで、円を描くように磨かないといけません。
赤のように縦にペーパーを動かさず、シリンダーのRに沿わせて黄色の円を描くように磨くという事になります。
昔、整備士の方から教わったことなのですが、目の細かなペーパーでの細かな傷でも、縦筋を入れてしまうのは良くないようです。
ピストンの動きと同じ縦筋があると、フルードが染みて漏れやすくなってしまうと言われました。
シリンダーと同じ要領でピストンも少し磨いてみました。先端のゴムカップも新しく付け替えています。
カップはいつも使っているセイケンの補修用ゴムカップを使っています。
ゴムカップをピストンにセットする際は、ラバーグリスを付けて入れていきます。
ピストンを痛めないよう保護しつつ、ロッキングプライヤーでしっかりピストンを固定して、ゴムを力技で入れていきました。
ゴムはかなりきつめですから、こうでもしないと入ってくれません。
ピストンの先端にはこのようなスプリングが付きます。
分解時に紛失しやすいパーツですが、これが無いと再使用できませんから忘れないよう装着していきます。
ピストンをシリンダーに入れて動きを確かめます。
指でピストンを押すと引っ掛かりも無く滑らかに動きます。シリンダー内部とピストン本体をペーパーで磨いた事もあり、スムーズに動きます。
ピストンは先ほどのスプリングが効いているので、最後まで押し込むと少し戻ってきます。
この少しだけ戻るすき間が無いと、シリンダー内にフルードを入れることが出来なくなるのだと思います。
左右両方のシリンダーにピストンが入りました。といってもこの状態では左右の区別が無いので、左右どちら側にも使える状態となっています。
これにアジャスターのギヤを付けると左右が決定するのです。
見た目はあまりきれいではありませんが、古いものですから仕方ありません。ブレーキ部品ですから機能的にしっかり働いてくる事が大事です。
因みに今回ピストンの潤滑に使ったのは、ワコーズの耐熱シリコンブレーキグリースで、前にも何度か使っていますが使い勝手の良いグリスだと思います。
アジャスターギヤをセット。
このギヤはギヤ部分と、ボルト部分の2つのパーツで構成されています。
セットする前に、先ほどと同じシリコンブレーキグリースを内部に塗っています。
マニュアルにはブレーキグリースを充分に塗布する、と記載がある部分です。
アジャスターギヤには左右の違いがあります。
右側用のギヤはボルトのねじ込みが逆ネジになっているのですぐに区別できます。
このギヤの役目は、ドラムとブレーキシューとの間にすき間調整をやってくれることです。サイドブレーキを引く度に必要ならアジャスターギヤが回り、すき間を適度な間隔に自動調整してくれます。実際に触りながら構造や仕組みを見ると、とても良く考えられた動きだと感心します。
このアジャスターギヤを最初に本体にセットする際は、写真のようにボルト部分を奥まで締めこんだ状態にしてシリンダーにセットします。
初期車両のシリンダーピストン用のダストカバーはこのような形。
マイナーチェンジでリヤシリンダーの設計変更があった際、ダストカバーの形状も変更されています。変更があったという事は何らかの問題を抱えたカバーだったという事なのでしょう。
おそらくこの写真でいうところの上側のベロ部分の抑えが甘いため、それが原因での不具合が報告されたからではないかと思います。後のタイプではしっかり全体が固定されるタイプに変更されています。
カバーを本体にセットした状態。
問題があると思われるブーツであっても、初期のシリンダーにはこれしか装着できないのでこちらを使っていきます。
私の場合、距離もあまり走りませんし、最近ですと車検毎、長くても車検3回毎にはリヤシリンダーを清掃していることもあるのか、こちらのダストカバーでも不具合のようなものは感じられません。
ゴムカバーはリング状のスプリングで固定します。
このリングばねも初期車の専用形状です。
オーバーホールしたシリンダーを実際に付けていきます。
来年早々に切れる車検期限もありますので、リヤのドラムブレーキのメンテナンスを兼ねてこのシリンダーを組み込んでいきます。
アルフィンドラムを開けた状態。
今回外してしまうシリンダーが見えています。外す直前まで何の問題もなく使えていたシリンダーです。
問題の無いシリンダーを交換するのは、カップだけ新品に交換した古いパーツでも使えるのか?を試してみるようなものです。
車体に取り付けたオーバーホールシリンダー。
ブレーキシューなどのパーツは外して清掃している段階です。
パーツの形が変わっているわけでは無いので、交換する前とほぼ同じに見えてしまいます。
更にブレーキシューまで組み付けてみた状態。
ブレーキシューを繫ぐスプリングは純正新品が入手出来たので、新しいものに交換しています。
スプリングは今でも入手可能で、驚くような価格でもないので素直に新品を使っています。新しいものは赤や緑の色が付いていて良いです。
このあと反対側も順番に組み付けていき、ドラムブレーキのメンテナンスは終了。
この後サイドブレーキを引いてすき間の調整(引くとカチカチと音を立て少し回った)を行い、テストドライブ迄行いましたが、問題はありませんでした。でももう少しの間注意して見ていく事にします。
オーバーホールしたシリンダーを付けたのですから、当然今まで使っていたシリンダーが手元に残ります。
外したシリンダーの状態も見ておきます。
シリンダーピストン部分のダストカバーは、内部にちょっとだけ汚れが付いていました。前回(2年前)の車検でここは一度外して清掃しているので、汚れもこの程度で済んでいるのでしょう。
シリンダー内部。
このシリンダー自体は新品に交換してから8年位のリヤシリンダーだと思います。
メモを見ると、前回の車検でも車体から一度外してシリンダーの清掃を行っていました。
清掃から2年ほどの使用でも、この程度汚れが付いてしまうようです。でも実際の使用にはこの位ならば何も問題のないものなのでしょう。
今から20年以上前にリヤシリンダーを分解したときの写真です。
どうやらこの時の状態が記憶に残っていて、リヤシリンダーはマメに掃除しなければという気になってしまうのです。
この時は10年位?それ以上かもしれませんが、長期間オーバーホールせずこの状態になったと記憶しています。
このくらい汚れていても、分解する前はブレーキが利いていたので、ブレーキのシリンダーというものは丈夫なものです。
よくリヤシリンダーが固着して動かなくなるとう事を聞きますが、それは放置期間が長い車や、余程メンテナンスを怠った場合に起こるものではないでしょうか。
そんな事もあってついつい比較的短期間で掃除やら、オーバーホール等行ってしまいます。
これは先ほど外したものを簡単に掃除した状態です。ピストンは良い状態です。ブリーダーのプラグは使用し始めると直ぐにサビてしまうようで、これは仕方ありません。
ピストンとアジャスターギヤ。
ギヤはとてもきれいな状態で、右側を示す刻印もきれいに見えます。ピストンもツルツルできれいです。
参考までにこのシリンダーの使用状況を再度確認しておくと、おそらく装着して8年程度、距離で6~7千キロ位使った状態だと思います。
部品を新品から使い、そこそこメンテナンスをしていれば、この程度使ったくらいではシリンダーパーツは全く問題ない状態にあるという事のようです。
左右とも出来る範囲できれいにして、そしてピストンのカップも新しくしてから組み付けました。
もし今回装着したシリンダーに漏れなどの症状があるようなら直ぐにこれに交換しようと思っています。うまく機能して問題無く使えるようでしたら、数年後の車検の時に交換という事になりそうです。
清掃とメンテナンスを行ったこの状態で保管しておきます。<2025年11月>