ライトカバーとケース

クルマのデザインやスタイルの好みは人それぞれでしょうけれども、初期のZの特徴的な部分と言えば、やはりこのライト廻りのデザインは外せないでしょうし、それを引き立ててくれるアイテムが「ライトカバー」ではないかと個人的には思っています。

 

 

今回はそのライトカバーについてなのですが、S30系Zには留め具の位置が違う事により、大きく二種類あるという事は少し詳しい方でしたらご存じの事かと思います。
以前ライトカバーについて調べた際に、この写真のタイプが初期タイプで、この後ビス位置が変更になったものが後期タイプであると記載したことがあったのですが、良く調べてみると、どうやらそれは間違っていたようだと最近になって気付きました。(本当は教えてもらった)

 

ライトカバーその①。
この写真のカバーですが、部品番号をよく調べてみると「63900-E8726」という番号が振られるパーツであるようです。
(※赤〇はビスの位置)

 

 

ライトカバーその②。
こちらが今までビス穴から割れやすいため、対策が施された後期のタイプと思っていたカバーですが、調べてみるとこのカバーのパーツ番号は「63900-E4126」であることがわかりました。先の「-E8726」より若い番号が付けられている事になります。番号順であるならば、どうやらこちらが先に出た初期のライトカバーという事になるようです。ここで訂正させていただきます。

 

日産からの新品の供給が無い今となっては、前期・後期がどうだと言ってみても、あまり関係無いような気もします。ただ今までの経験から言える事として今回「後期」と判明したタイプの方がアクリルに亀裂が入りやすい気がしますし、実際に以前使っていたカバーも、写真の赤印付近から亀裂が入って割れてしまったものがありました。
現在の車にもライトカバーを装着したいと思っているので、今回はライトカバーについて詳しく調べ直すことにしました。


 

 

Zがデビューした当時の写真を確認。
念のためデビュー時のモーターショー展示車のカバーはどうなっているか写真で確認します。昭和44年の写真ですが、不鮮明で良く見えません。
これとは別の写真で確認するとわかるのですが、このカバーは市販の二種類のカバーとは違う位置にビスがある(3か所留め)、ショー用の暫定カバーのようであり、たしか前に日産の関係者の方から(誰であったかは忘れてしまいました)これについても聞いた事があった事を思い出しました。

 

 

穴の位置を一枚にまとめるとこんな感じです。
当初は3か所でもいけるかな?という感じだったのでしょうか?でも市販モデルでは固定場所を一つ増やし固定の強度を上げた事になります。最初のショーモデルでもカバー先端に打っているのですから、流れからすると黄色の後期タイプに似た位置にビス位置を持ってきそうなものですが、市販の段階になって全く別の位置にしたという理由もよくわかりません。

 

 

昭和44年発行のサービス周報にライトカバーの記述があります。
私が所持している資料はそう多くは無いのですが、この「サービス周報」はモデルの変更点が記載されていて、こういった時には役に立ちます。

 

 

オプション部品一覧表のところに載っていました。

 

 

ライン装着オプションではない、「デーラ 装着」オプション欄に載っています。
当時の発売車両には標準設定は無く、「ヘッドランプカバー」は皆オプション設定であったことがわかります。
備考欄に「レースオプションの流用」の記述もあります。ロールバーやエアスポイラーと同じ扱いだったようです。実際に初期のレースやラリー車両に使われた写真を見ると、今回「初期」としたカバーが使われている車両を確認できます。

 

 

1970年(昭和45年)レースドニッポンの432R
ライトカバーのビスが初期の位置にあります。

 

 

1970年 鈴鹿1000キロレース時のもの。初期のレース用オプションとはこの形であった事がわかります。

 

 

 

1971年(昭和46年)10月のマイナーチェンジで240Zが追加され、ライトカバーの扱いも変わります。

 

 

240Z-Lには標準装備されるようになりました。

 

 

このカタログにも使われた、きれいな青の240ZLには後期タイプカバーが標準で装着されることになります。
1971年の10月の事ですが、この時240ZLだけは専用のライトケース【63115(6)-E8731】も設定されていました。このケースは優れていて、取り付けのための金属の小さな板を付けなくともよく、メーカー加工で初めから小さなビス穴が4カ所に開いている専用「樹脂」ケースでした。

 

 

取り付けの板
通常「樹脂ケース」には、まずこのプレートを装着し、それからこのプレートにライトカバー用のビスを使い固定していきます。240ZL用のケースには、あらかじめ穴とナットが付いているのでこれを付ける必要がありません。実はこのプレートの位置決めがとても重要で、下手に開けてずれるとビスが入らなかったり、ビスが斜めになってしまったりするので、慎重に行わないといけません。240ZL用ケースはこの作業が不要なのです。

 

 

240ZL専用樹脂ケースとビス穴。(63115(6)-E8731)

 

 

穴の拡大。
純正品質ですから、純正リムを装着すればこの位置でピッタリ合うのでしょう(おそらく)。

 

 

サービス周報の写真に戻ります。
発売から2年でカバー固定ビスの位置を変更しました。問題がなければ製品は変えないでしょうから、変えなくてはならない何らかの理由があった訳です。でも良かれと思い変更したカバーも、先端の位置にビスを持ってきたため、結果的にはアクリルが割れやすくなった変更になってしまったのはなんとも皮肉な事です。
変更した理由は何だったのでしょうか。先端にビスを打っている事から、一番風を受ける場所をしっかり押さえる目的だとすれば、ホコリや水の進入対策でしょうか?これについては詳しい資料がないので不明です。

 

 

因みに割れ易いと言っている後期のアクリルですが、ライトケースとアクリルカバー、そしてリムの形状のちょっとした違いから、ビスを強く締めこむと割れてしまう事が多かったという事ですので、ビスをほどほどに締めるよう注意すれば、割れはある程度防止できるはずです。中でも矢印部分のビス部分は割れが入り易いようですから注意すべき部分です。
仮に強く締めこんだとしても、このケースはほこりや水の侵入は完全には防げません。程々に締めて、汚れたら外して掃除すればよいかと思います。

 

 

ヘッドランプケースの比較。
これは前の車の整備記録の記録写真として撮っていたものです。左が初期の樹脂ケース(63116-E4100)で、右は1973年から使われるようになった金属(63116-N3000)のケースです。
只パーツリスト等では1973年となっていますが、実際のところ何処で切り替わったのか、番号での線引きができません。

 


ケースの状態が両方ともよくないので、こうして比較しても写真ではわかりにくいのですが、実際に見るとFRPは角がきれいに立っているのですが、スチールはやや丸くなっています。

 

 

1974年のパーツリスト(ライトカバーの番号)。
「63900-E4126」(今回初期タイプとしたもの)と「63900-E8726」(同じく後期タイプ)のパーツリストの注釈を見ると、「E4126」は樹脂ケース用という手書きの注釈があり、「E8726」は鉄板ケース用と手書きでの記載があります。(補足手書きはメーカー関係の方)
先の「E8731」(240ZL専用樹脂)はここに記載が無いのですが、2年前の1972年版には記載があり、ここに記載されている「E8726」(鉄製)は、1972年版には記載が無く、この1974年版で記載されます。「E4126」と「E8725」のように大きく違う番号は別にして、数字の小さな差は年代識別にはあまり当てにならないのかもしれません。

 

 

1972年(昭和47年)のパーツリスト。
この時期には頭の番号として「63115-」やS30の初期を示す「E4100」も振られていたようです。1974年版では部品番号が大きく変更されていることがわかります。


 

このように今後ケースが樹脂から鉄に変更される事がわかり、46年10月頃の段階でそれを踏まえ、ライトケースのカバーについても初期タイプから後期タイプへと設計が変更されたという事なのでしょうか。でもこの時期に既に出ている240ZL用樹脂ケースは後期タイプの穴に合わせているのですから、金属ケースのために変更したとはあまり考えれられない事です。カバーの変更理由はよくわかりません。




初期の樹脂ライトケースのライン。
ここまで寄れば樹脂ケースのラインがわかるかと思います。
赤い線を引いてみましたが、ボンネットの先端ラインからライトケースの内側まで、赤線のように一直線にきれいに繋がり、スパッとケースの内側で切られるラインが樹脂ケースの特徴でしょう。樹脂は角がきれいです。でもライトカバーを装着するとこのラインは見えなくなってしまいます。
代わりにライトカバーを装着することにより、フェンダーとボンネットを滑らかに面で繋ぐ魅力が出ますし、レースで使われていたZのイメージが強く出るという事もあり、今でも多くの方が装着するアイテムになっているのだと思います。

 

 

初期のライトカバーとリム。
よく見るとカバーとリムは初期・後期で微妙な違いがあります。
こちらは初期のカバーですが、アクリルカバーはカバーのふくらみ部分のラインがくっきり出ている(細く赤線を入れた部分)ようで、ボンネットとフェンダーを滑らかに繋ぐようデザインされているようです。リム部分も(赤線部分)曲げ角度が微妙に違うようです。
実はこのあたりにつきましては、友人から指摘されるまで気付かなかったポイントでした。

 

 

後期のカバーとリム。
この違いを教えてもらってから、改めて見比べてみると、後期はアクリルカバーのラインが薄めであり、リムも若干なだらか(これがちょっとわかりにくい)になっているのなと思うのですが、リム先端の折れ曲がり(直角接合部分)の接合角度が違う事については確認できました。

 

初期カバーリムの先端接合部
下の後期カバーリムと比べてみると接合部の形が少し変わっています。

 

 

後期カバーリム先端部分。(補修しようと思いブラストした状態)
やはりスチール製のケースが登場するのを見据えてリムをよりフィットさせるため、形状を変えたのでしょうか。現在では年数も経過して、関係した方からもお話は聞くことが出来ません。ここはとりあえず変更の理由はおきまして、初期と後期では固定ビスの位置以外にも、微妙な違いがあるという事だけをメモしておきます。
そのうち誰かが真実を突き止めてくれるでしょう。

 

 

比較する参考になればと、これまで撮影させてもらったストック写真の中から、ライトカバーを装着した車を取り上げてみました。
こちらは「63900-E8726」タイプのようです。

 

 

こちらも「63900-E8726」タイプのようです。

 

 

「63900-E8726」タイプのようです。

 

 

私が撮影していたライトカバー装着車両では、かなりの確率で「63900-E8726」タイプが装着されていました。

 

 

「63900-E4126」が装着された車両。このタイプを装着している車両は少なく、比率的には1~2割程度になるのではないでしょうか。数が少ないという事は、やはりこのタイプが初期タイプで、たくさん残っている「63900-E8726」が後期タイプという事になるのではないでしょうか。初期・後期の違いはやはり微妙で、もしかしたらアクリルも割れてしまい交換され、違うタイプ(社外もあるし)が装着されている事もあるかもしれません。

 

 

他のサンプル車両を2台。
1972年のモンテカルロラリー車。
車体番号までわからないので、何年製造の車かこの写真だけですとわからないのですが、初期のカバーが付いています。

 

 

260Zパトカー。
年式相応にライトカバーは後期が付いています。ボンネットの「旭日章」エンブレムも目立ちます。

 

 

そして今回久しぶりにつけてみたライトカバー。
このリムはずっと前から所持していたのですが、かなり傷んでいて修復しようかずっと悩んでいたものです。
今回この車に一度付けてみようかと思い、修復と再メッキをしてもらいました。「後期リム」ですがしっかりと仕上げてもらいました。

 

 

再メッキ前。錆でリムに穴が開いていました。正面になる部分に一か所とサイドに一か所です。他の部分も結構ボロです。

 

 

横の小穴は残ってしまいましたが仕方ありません。無理と言われたものを、それこそ無理にお願いして仕上げてもらったのですから。
リム自体が薄い鉄板なので、溶接が難しいと言っていました。

 

 

正面の目立つ部分の大穴は修復してくれました。

 

 

あのボロボロをここまで修復してくれたのですから感謝しなくてはいけないでしょう。

 

 

久しぶりのライトカバー。アクリルカバーも結構傷んでいるものなのですが、やはり装着すると雰囲気が変わります。
空気抵抗値も少し良くなっているはずです。たぶん・・

 

 

でもボディーカラーがシルバーですとライトリムが吸収されてしまうように見えます。明るい色の方が似合うのかもしれません。

 

 

後日イベントでたくさんのサンマルを見る機会に恵まれたので「初期-後期-後期-後期」を上から撮って並べてみました。ほぼ変わらないように見えます。バンパーが光って邪魔をしているのと、撮影角度が皆微妙に違うのでこの写真だと違いが判らないようです。



光の当たり方にもよるのですが、カバーを付けると、フェンダーからライトカバーに続くラインと、更にカバーを抑えるリム先端から、ボンネットの先端ラインまでが一本のラインで結ばれるように見えます。
<2022年5月>

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