初期のスロットルレバーを作る

現在の車両に付いているレバー。左がチョークで右がスロットルレバーです。
このような形の四角いレバーが装着されていますが、おそらく新車時はこの年式ですと違う形のレバーが装着されていたはずです。

 

装着されていたレバーのアップ。
左は「S30」の更新版のチョークレバーのようですが、右側のスロットルはちょっと違うように見えます。頭の部分が小さいので初期の「S30用」ではないと思われます。

 

こちらが「S30」の初期車に装着されたスロットルレバーとチョークレバー。
私の車も新車時はこのレバーが付いていたと思います。初期レバーはデザイン重視なのでラインがきれいで、操作するにもなんとなく心地良いのです。
この初期の丸いレバーですが、付け根の部分が細く作られているので強度不足から割れます。特にネジ穴の付近から亀裂が入り、結果割れてしまう事が多かったようです。

 

 

こちらはカタログの内装紹介のページです。チョーク&スロットルレバーが見えます。

 

 

カタログレバーを拡大してみます。暗くてはっきりとは見えませんが、なんとなく丸いレバーであることはわかります。

 

 

こちらはZ-Lのオートマチックの写真です。

 

 

拡大すると丸いレバーの当初の形がよくわかります。良い形をしています。でも市販品より表面が丸まっているように見えるので試作品?のようにも見えます。
このカタログ写真でみる限り、Z-Lのオートマチック車にはスロットルレバーは設定されていなかったようです。

 

 

今の車に装着されているレバーに戻ります。
このように装着されていたレバーも割れて補修されています。ヒビもやはりネジ穴から入っているようですからここが弱点だった事がわかります。。
またよく見ると、「S30用」は通常ですとこの反対側に穴が開くはずですから、このレバーは違う車からの流用という事もわかります。

 

 

現在の車に四角いレバーだったのも割れて交換したためでしょう。前のオーナーさんはこのレバーをエンジンスタート時によく使っていました。おそらくそうした車は劣化が早まり割れてしまい、現在も丸いレバーが残っている車というのは、これをあまり使用しない乗り方であったのかと推測します。
対策品として出てきたのが左側の四角く、全体的に少し太くなっているレバーです。でも初期車両に乗るものとしては、耐久性が低いと言われても当初のデザインであるレバーを使いたいと思ってしまいます。
私も初期のレバーの予備は無く、これを装着する事ができないので、今回はこれを似た形で作ることにします。

 

 

240Z追加後のパーツリストを見ると、初期用のレバーアッセンブリーはすでに角ばった形に変更されています。

でもこのイラストはちょっと残念で、レバーを固定するネジの方向が違う向きから止めるように描かれています。実際の方向は内側から入る(赤→)ようになっているのが正解です。
パーツリストはメンテナンスの際、部品組み込みの順番を見るのに役立つのですが、時々おかしな記載があったりするので注意が必要です。

 

 

初期のパーツリスト
ちょっとイラストのレバーは形がよくありませんが、丸い頭のレバーが描かれています。丸いレバーは初期車両が販売された、約2年間だけ存在したものだったのでしょう。

 

 

マイナーチェンジ後のパーツリスト。
今回作るスロットルレバーも、そこから出るワイヤーのアクセルペダルのリンクの機構も240販売以降はイラストから省かれています。
マイナーチェンジで、パーツリストも新しく発行しています。その時の車両の部品を描いているのだから仕方ないところでしょう。

 

 

さてそのレバーですが、一番簡単なのはアメリカのショップで2本ともリプロを作っているところがあるので、そこで入手すればよいのでしょうが、私の場合、横文字が苦手という事もあり海外注文が面倒で注文には至っておりません。
前に自分で複製しようと思いシリコンで型取りし、レジンで自作した事もありました。でもレジンでは強度が足りないのと、レバー内部のくり抜きが難しいのでそのままになっていましたが、ここのところのコロナ禍で在宅時間が増え、もう一度複製にチャレンジしてみる気になりました。
今回は初期の細いタイプ風で製作しようと思っていますので、純正と同じように強度が足りないかもしれませんが、壊れたとしても3Dデータ&プリント方式であればすぐ作れますから、安心してレバーを引くことができます。

 

 

初期のレバーは曲線だらけで作られています。3Dソフトで連続した曲面を再現するため、曲面の物体を再現する描き方からマスターしなければなりませんでした。
四角や三角の単純なモデルであれば比較的簡単に作れると思いますが、今回のような曲面はやった事がなく難しかったです。気が向いたときにしかやらない素人モデラ―ですし、画面のイメージと実際にプリントされる形が違うので、左右非対称の丸いレーバーを再現するには本当に時間が掛かってしまいました。

 

 

今回はスロットルレバーを作る事がメインでしたが、反転すればチョークレバーも作る事ができるので、まずはレバーのラインを出して膨らみを出していきます。何回も修正をしてこんな感じか?というものが出来上がります。でもそれを画面で確認すると雰囲気は良いように思えるのですが、実際にプリントしてみると素材の樹脂の違いもあり、オリジナルの形が再現できません。気に入らない部分のラインを地味に修正していきます。

 

 

実際にプリント。
実際にプリントしてみないと、レバーの全体的な雰囲気がわからないので区切りごとにプリントしました。3Dプリントされたレバーはこのような状態で送られてきます。プリントはいつもお願いしているDMMプリントで、MJFという樹脂素材でプリントしています。
この時の素材は強度がありレバーとして耐えうる強度があるものですが、このように素材の色がグレーなので黒く塗らなくてはなりませんし、白い文字(記号)部分も白を入れる必要があります。ちょっとザラザラしていますから、これをツルツルになるまで磨いて黒を吹き仕上げないといけません。

 

 

記号部分は溝を掘っているので白いペイントを流して入れ、はみ出した部分を軽く磨いて線だけにします。他の方法としては細いシリンジのようなもので、うまく溝だけに白色を流し込めば、磨く必要もなく仕上がります。遠目に見るとそこそこ使えそうなレバーですが、純正レバーのクオリティには全く届いていません。

 

当初目指した形は、3Dプリントで作った状態できっちりと受け部分に入り、見た目が良く、引っ張っても壊れないレベルに仕上げようと頑張ってきました。
でもプリントされたものを実際に差し込むと、きつくて入らなかったり、逆にやたらと上下にガタが合ったりするので、外見だけでなく内部のモデリングも大切です。

 

 

各部の寸法を測ってレバー内部まで作っていたつもりでしたが、レバーに差し込んでみるときつくて入りません。
修正してもそれが続き、解決できません。面倒なので純正品のカットモデルを作ってみました。
これで内部のラインがわかり、うまくモデリング出来ると思っていたのですが、それでも片側だけ入らないという状況に陥り、その原因がわかりません。

 


結局入らない原因は、矢印のネジ穴部分に金属のバリがあった事でした。ここをやすりで削るとうまく入ります。横溝の寸法をシビアにし過ぎたようです。
こんな事の繰り返しです。作ってはプリントして実際に入れて確かめて・・また修正。
※ここは通常削る必要は無いところですが、今回のように削らなくてはならない場合、金属のカスがネジ穴に入らないように注意しないと、写真のように穴が塞がってしまいます。

 

参考までに、ここに入るネジですが2mmのマイナスネジが純正仕様です。
外す時にどこかに行ってしまう厄介なネジです。このネジは扱いにくいので、私は六角レンチで締める2mmのネジを使っています。

 

 

六角ネジですと、ネジをレンチに付けたまま横から差し込んでいく事ができるので、ネジを落としにくくなります。

 

 

かなり形が良くなってきた(バージョン8)ので、これで最後にしようと光造形の黒い「NXE400」という樹脂(プリント代がグレーの3倍!)でプリントしました。
近くで見ると粗が目立つけど、表面の感じも良いしちょっと離れたらこれで大丈夫な感じです。

 

高い樹脂のレバーに白を入れて見たところ。
色を入れてみると、レバーの雰囲気がかなり出ます。
でも実際に装着しようと差してみると、最後まで入りません。差し込み部の幅3mm、奥行き26mmの空洞部分がうまく奥まで再現されていないようで入りません。これは光造形式3Dプリンターの悪い部分のようで、空洞部分の再現がうまくデータ通りに出来ない事があるようなのです。空間の部分は造形中に溶けて形が崩れる(少しでしょうけれど)ような事があるようです。これはプリンターの仕様でしょうから仕方ない事ですので、直径3mmのドリルで26mmほどの奥行になるように差し込み部を少しだけ拡張修正しました。

 


V8のモデルからさらに修正。頭の丸い部分を横に少し広げて、レバー内部を少し広げ入れやすくしてみたV11。

 

薄付けパテで表面を滑らかにしてスプレー塗装。記号部分は白を入れるのが面倒になり、このレバーは作業が楽なシール式に変更しています。
六角ネジで固定していますが、締める際も比較的簡単に入ってくれました。

 

 

V11はちょっと頭部分を広げ過ぎたかと思い、頭の幅を少し戻したV13。


 

このあたりまで来ると、熟成?された感じでレバーの受けにスムーズに入りますし、ネジ穴位置もほぼピッタリという感じに仕上がります。
オリジナルのレバーは黒の艶ありですから、色の問題は残るのですが、レバーとしての実用性は良いところまで仕上がりました。このモデルで概ね満足できるところまできた感じです。
今回のレバー作りは、初期レバーとしての雰囲気があるかという事と、レバーとしての強度、記号部分の大きさのバランスを確かめるため様々プリントしてきました。
いろいろやってみた結果、仕上がりとプリント代のバランスで選ぶと「MJF樹脂のブラック磨き」になるのではないかという結論に至りました。

 

 

左はV13のMJF樹脂の黒染め+磨きで、右はV8のNXE400・ブラック。
この比較写真ではプリントした材質が左右で違うのでちょっと雰囲気が変わります。完璧なコピーではないのですが、なんとなく初期レバーの雰囲気が出てきたので、形の修正はこれで終了です。他に修正するとしたら、記号部分の大きさのバランスだけです。


 

最終的にチョークはV13、スロットルは記号部分のバランスを整えたV14で終了です。
モデリングして出来具合を確かめていく工程が楽しくなってしまい、やめられずここまできてしまいました。

最後に・・
私も基本は純正品信仰者ですから、四角い頭の純正品を否定する気持ちは全くありません。この部分に関しては丸いのが好きというだけです。このレバーも純正品が入手できるならそちらをお勧めしますが、もし丸いレバーに興味があり3Dプリントパーツ等にも興味があるという方がいらしたら下からどうぞ。正直なところ、塗装が面倒なのでお勧めできませんが、一番安いナイロンプリントでもレバーとして使ってみるのでしたら問題なく使えます。
<2021年10月>

DMMプリントへ

メンテナンスメモ④ メニューへ