車載工具について

<こちらは2018年にまとめた内容の再編集版です>

新車時に搭載された工具・ジャッキについて見ておきたいと思います。
私自身もそうなのですが、販売当初搭載されたジャッキや工具については資料が無いのでよくわかりません。 特に工具についてはちょっとした作業で収納袋から出して使ったり、しまい忘れたりして散逸してしまうことが多いと思います。 車両を維持する上で重要な物でもないのですが、オリジナル仕様重視の方の参考になればとわかる範囲で今回まとめてみました。 尚検証するのは、432が生産された昭和44年~47・8年位までの車載工具がメインです。

 

初期のZに搭載されたジャッキ。
昭和44(1969)年の発売当初から、当時のニッサン他車両でも使われていた、セドリックの絵柄のジャッキが使われました。
ジャッキ本体の仕様は変わるもの、「セドリックシール」は少なくとも432後期(1972年)まで続いていたようです。

 

 

輸出車両にも同じ物が使われていた。
初期に輸出されたダットサン240Zも同じものが搭載されていたようで、現在のアメリカの専門ショップでは「シリーズ1」ジャッキとして単体販売されています。
とはいうものの、貴重な部品のように驚くようなプレミアム価格で売られているようなものではないので、初期車両に乗っている方で、このジャッキが搭載されていないという方は、入手を考えても良いかと思います。
探すのが面倒という方はシールのみも国内の専門店で売ってますから、今のジャッキに貼って雰囲気だけでも「シリーズ1」にして楽しむのも良いかも。

 

こちらはジャッキを回すハンドル。 現代のクランク棒で回すジャッキとは少々異なります。
鉄の棒を二本組み合わせて使うわけですから、かさばりますしこれだけで重さもかなりあります。

 

 

S30搭載のジャッキの比較。
現在確認できるS30搭載ジャッキは「セドリックシール」と「S30Zシール」が付いたものが確認されています。 その2つを比較してみます。
比べると車両に当たる部分の形が違うので見分けはすぐにつきます。
現状、セドリックシールが1972年までは使用されたという事は確認出来たのですが、フェアレディZシールが使用され始めた時期についてはわかりません。

 


初期のジャッキ裏面。

 

 

Zシールジャッキの裏側。
裏面の固定も四か所になり強度の改善が図られています。
ジャッキそのものの強度からすれば、この4か所のリベット固定が間違いなく良いのでしょうが、2箇所のリベット固定がオリジナルだと言われるとそれを装着したくなるのがマニア心というものなのでしょうか。

 


変わってこちらは車載工具。
47年の240に搭載された工具一式です。左の用紙は当時の工具明細です。
「ダットサンフェアレディZ工具明細書」 
・ジャッキ
・プライヤー 150ミリ 
・3セットスパナー(8×10 10×12 14×17)
・マイナス・プラス兼用ネジ廻し
・ホイルナットレンチ
・タイヤストッパー
・工具収納袋
  最後に 47.6.15 の印も入っています。 

こうして明細までついているのですから、47年の240ZGにはこの内容のものが付属していた事は確実です。

 


これは別の車両(432)ですが工具一式。

プラグレンチが入っています。

 


そして工具収納袋です。これは初期~ のもの。
文字の間隔が狭いのが特徴です。(次の写真と比較して)

 

 

比較してこちらは2×2の工具収納袋。文字間隔はかなり広くなっています。
工具収納袋もこのように前期と後期があるようです。
以上4枚はZ仲間のEさんから拝借した写真です。

 

 

そしてこちらは45年製造の432の車載工具一式。
最初の「シリーズ1」ジャッキの写真もこちらの車両に載っていたものです。
この中でプラグレンチだけは別のものだと思われます。(ジャーマニーの文字が刻まれていたので・・)

 


収納袋を拡大して明るくしてみると・・
やはり工具収納袋は文字間隔の狭い前期ものです。

 

 

スパナセット。
上の明細通りの「3セットスパナー(8×10 10×12 14×17)」です。

 

 

残念ながら明細は入っていなかったので当初の内容はわかりませんが、物持ちのよいオーナーさんなのでこの内容でほぼ合っていると思われます。
他の車の工具と混ざらないようプライヤーには「Z」と記入しているくらいですので。

 



また別の初期車両のサンプル写真です。
中にクシャクシャになった紙があり、それを広げて写しています。

 


読みにくいところがあったので打ち直してプリントしたのがこちら。
まず不思議に思ったのはセドリック明細となっているところ。内容的には他のZには入って無かったモンキーレンチも記載されています。何らかの理由でセドリックの工具と入れ替わってしまったのかもしれませんが、サンプルとして掲載しておきます。

 

 

レンチサイズも19までだったり・・

 

 

あとはこんなのまで入っていました。
これは明細にも記載が無くあり得ないものです。またドライバーの数が多いのも不思議です。そういう意味からこちらは参考資料として見ておいてください。



1972年製、Z432の工具。
昭和47年製造の432に搭載された車載工具一式について、いつも情報をいただく「ワンオーナーK様」より決定版ともいえる内容の資料写真をいただきましたので掲載しておきたいと思います。
まずはジャッキ。シールが両側に貼られています。この年式ですとセドリックシール+注意書きとなるようです。

 

 

セドリックシールのデザインは変わらないようです。
とてもきれいな状態でシールが残っています。いかに丁寧に扱われてきたかわかります。

 

 

ジャッキの付属品も同じ。
この写真を見てもわかるように状態のよいジャッキです。こんなにシールがきれいに残っているものも多くはないと思います。

面白いのは黄色〇部分。
車体に当たるガイド?部分は初期タイプとは違うのですが、パンタ左右部分の固定ボルトは初期と同じ小さなボルトという「シリーズ1.5」的なつくりです。



ボルトの参考写真1

初期型のボルト。

 

 

ボルトの参考写真2
大きくなった後のタイプのボルト。シールがフェアレディZになったジャッキのもので、ボルトを大きくして強化しているようです。

 

戻りましてS47製造の432ジャッキです。

裏の固定方法は4本留めとなり強化が図られています。
初期はここが2点留めでしたが、この時点で既に4点留めとなる改良が施されています。セドリックシールはそのまま使われ、注意書きシールが追加されたという事なのでしょう。

 

 

工具収納袋は初期タイプと同じ。

 

 

内部も同じです。

 

 

黄色い車止め。
この車止めのデザインはS30通して変わりません。

 

NISSAN の刻印と 2Eの刻印。
この刻印は 2(1972)は西暦1972年で、 Eは(A=1月 B=2月・・ E=5月・・)5月を表すのではとEさんから連絡をいただきました。 
参考までに、Eさんの車は0C(ゼロ・シー)らしく、1970年3月のようです。

 

 

二個セット。

 

 

変わってこちらは初期車両に搭載された車止め。
形は他の時期のタイプと変わりません。

 

 

NISSAN の刻印。
でも下部にある製造年月と思われる刻印はありません。



裏にありました。ハンコです。?K ?

 

 

「9K」 です。
1969年の11月と読んで良いと思われます。この記号は車両の最初期製造年月と合致するので、やはり製造年月なのでしょう。

 

 

こちらは1972年式のオーナー、Kさんがほぼ間違いないという車載工具一式の写真です。
8~17までのレンチ3本というのがオリジナルセットなのでしょう。工具が揃っているかどうかの確認に使えます。
細かくみると、スパナサイズがEさんの明細と一部合いませんが概ねEさんの内容と同じです。(明細は、8×10 10×12 14×17)

製造時期により搭載工具も若干変更されたのかもしれません。


 K様資料の提供ありがとうございました。

 

 


次に車載工具の刻印の読み方や違いなどを取り上げておこうと思います。
写真は「フェアレディZ ラベル」が貼られたジャッキの刻印です。VHJ と刻まれています。

 



Z仲間のEさんからの情報を元に分析してみたところ、これは製造年月日を表しているのでは?という結論に至りました。
どうやら初めの文字が・・  O=1969年製造、P=1970年製造、Q=1971年・・・となっているようなのです。
ですのでVは1976年(昭和51年)製造という意味ではないかと。

 

 

この写真は真ん中に変な刻印がはいっているのでサンプルとしてはあまりよくないのですが、初めの文字がOですので1969年製造で、真ん中の▼は何かの記号を打ったものの、打刻ミスで読めなくなったものでしょう。

他にもEさんがサンプルジャッキを探して確かめたところ・・
1970年車両にPの刻印のジャッキ、他にもQ、Rの文字が使われており、S30Zの製造年と合致しそうです。
ですので最初の文字は製造年、次がどうやら製造月を表し(A=1月、B=2月、以降L=12月)、三番目が日のようです。
もっとサンプルを調べられると良いのですが、現状でわかっている事はここまでです。

 


そして最後に工具の刻印についてです。
こちらのスパナと下の写真のスパナは刻印で少し違う部分があります。

 

小さい写真でわかりにくいのですが、NISSAN MOTOR の間のマークに大きな違いがあるのです。

 


手持ちでサンプルになりそうなスパナがあったの並べて大きく見えるように写真を撮りました。上下とも日産車載用スパナです。
すこし状態が悪く見にくいのですが、拡大して確認するとマークに NISSAN が入っていることに気づくのではないでしょうか。
このようにS30Zの生産された最中、どこかの時期でNISSAN刻印が入るものと入らないものが切り替わっているようなのです。

 

 

二つとも同じ12-14のスパナですが、日産マークに文字が入るものとマークのみのものがあります。工具の長さも違いますし、他にも字体が違うことも分かりますでしょうか?
工具袋に刻印(型押し)されたNISSAN MOTORの字が狭い、広いという事は前回記載しましたが、それ以外に工具でも同じように幅の広い、狭いというものが存在していたとは驚きです。

 

 

NISSANマークのあるタイプがどこで切り替わったかは不明ですが、初期車両には間違いなくこちらのNISSAN文字入りマークの工具が搭載されていて、どこかのタイミングで切り替わっていたのです。
写真はマークに「NISSAN」入りの車載セット一式。

 

 

スパナ以外にもよく見るとドライバーやプラグ回しにもNISSANが・・・ 工具の細かいところに細工がしてあります。

以上E様とK様からの情報を元に再編集してまとめた「車載工具について」でした。

 

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